劉徳華の3年振りのファンにとっては待ちにまった香港コロシアム演唱會が99年8月に行われました。香港のスーパースターであるアンディのコンサートという事で、地元香港でも大きな話題となっていました。勿論日本のアンディ・ファンにも、このコンサートは盆と正月がいっぺんにやって来た以上のものでした。
会場は、今かいまかと熱い視線をステージに向けています。天井からは白い布が6枚ほど中央に向かって降りています。会場のライトが落ちた瞬間、観客席からは黄色い悲鳴が起こり、華仔の登場を予感させます。ステージ四隅からTVモニターがせり上がってきて、劉徳華のこれまでの奇跡を足早におさらいしていきます。ファンにとっては、ビデオで何度も見ている画面ですが、この場所で見るのは、また新鮮な感じです。世紀末を迎えて、劉徳華の今までを振り返っているかのようです。画面が「1999?」と写ったところで、ライトがぐっと落ちます。さらに歓声が高まり、ステージ中央のせり上がりが開いて、白い布が不思議な動きをしながら吸い込まれていきます。劉徳華の1999ステージの幕開けです。

スポットライトがステージ中央を狙いアンディがゆっくりとせり上がってきました。純白のロングコートにズボン、目深に被ったこれまた白の帽子姿の華仔登場。「謝謝イ尓的愛」のサビ部分を、ゆっくり唱いながら、大きく手を広げた華仔のライトに照らされた姿は、冬の朝、まだ誰も踏み締めていない新雪のようにキラキラとひかり輝いています。久しぶりにみるアンディの姿は、瞬きもできないくらいの美しさでした。そして、天井から花火が華仔の周りを取り囲むように、落ちてきます。オレンジ色の無数の火の雫がが、白い世界とマッチした時の煌めく美しさは、もうこの世のものとは到底思えないもので、ため息しか出ない観客。大きな拍手に迎えられる華仔。私はといえば、金縛り状態、目にはジワ〜と熱いものが。

「大家好〜」華仔の第一声。

よく見ると華仔の白いロングコートのボタンの見返り部分は真っ赤です。白いコートに実によく映えています。華仔は歩きながらロングコートを脱ぎ捨てます。中はこれまた真っ白のサラっとした長そでシャツ、中にもノースリーブの白のシャツを着ています。華仔がかけ声と共にカウントダウンが始まり、0となった所でこの中のシャツをビリっと破きます。この露出は香港でも話題となったのですが、そこはスーパースター・アンディ、新聞の1面を狙うためには、奇抜な事をしないとダメと、インタビューで話していました。その根性がスターだと、感心してしまいました。
一転してアップテンポなステージにと早変りします。「独自去愉歡」です。華仔の軽快なダンス、タップダンスの見事なこと、ダンサーとの統一感ある動き、ダンスが得意じゃないなんて、もう華仔の辞書にはありません。黄色のライトがタップの軽快さに弾みを与えているようかのよう、場内は華仔のタップに酔いしれています。帽子を取り、噂の金髪華仔、違和感は全くなく、衣装と絶妙にマッチ。正面左手に移動して、華仔は白いシャツを脱ぎ捨て、観客席に投げ入れます。ステージ4面あちこち移動しながら、元気一杯。曲が終わって、四隅の一画からせり上がってきたダンサーに赤の薄手のダウンジャケのようなノースリーブのジャケットを着せてもらい、すぐに「倒轉地球」です。ダンサーと楽しそうにハイな華仔が踊ります。息のあったダンサーとの掛け合いが見ていて楽しく、ウキウキさせてくれます。息つく間もなく、「開心的馬[馬留]」に曲が変わり、ダンサーからミッキーの手を渡され両手に、手袋を付けての華仔。ANDY GO ANDY GO GO〜のかけ声が会場一杯にこだまして、さらに会場は興奮。4面を縦横無尽に動き回り、「あ〜、アンディと一緒に楽しんでいるんだ」と感じさせてくれる、ファンキーな時です。ダンサーの顔も明るく、楽しそう。華仔とファンが一体化したかのよう。歌が終わると今度は、華仔は歌の先生と早変り。「一起走過的日子」のサビの「有イ尓有我有情有天有海有地〜」の練習をブロックごとに指導。華仔が唱い華仔が手を上げたら、そのブロックの人たちがサビを唱うという観客参加の趣向が楽しい。「一起走過的日子」が終わると、華仔はステージ中央から手を上げて退場。

すぐに、次のステージが始まる。四面から鎧を来た傭兵がライトを持つ者、せむしのようなものものしい姿の妖怪みたいな者が現れ、妙な動きをしながら周りを伺っているよう、「預謀」が流れ、華仔の声が会場のあちこちから聞こえ、観客の目は声の方向へと引きづられていく。が、華仔の姿は見えない。歌だけは聞こえ続けている。サビになりかかった時、ステージ中央から、スーッとせり上がってきた。リボンの編み上げのような上着、黒のズボンにマント。いかにも妖怪をやっつけるために、潜入してきたかのような正義の使者、アンディ登場。ステージがせり上がったまま、力強くロマンティックな唱い、そのダンスのドラマティックで強い意志を感じる振り付けに、会場は魅了、息を飲んでいた。

気がつくと正面右の角に檻に閉じ込められた赤いドレスを着た恋人らしき姫が…。アンディ王子は助けるために檻へと近付く。心にしみるようなバラード「冰雨」と曲は変わっている。檻の上でせつせつと唱い上げる華仔王子の心が通じたのか、一瞬の花火と共に檻が開く。しかし、姫は魔法でも掛けられているのか、心ここにあらずで、華仔王子をどうも認識していない様子。切ない心を華仔は唱い続けるが、またまた傭兵に捕らえられて、姫は檻の中へ。やっとの思で姫を探し出したが、姫は目が醒めない。歌は「絶望的笑容」。華仔王子はMR.マリックとなって姫を宙に浮かせる魔法で、姫にかかった悪い魔法を解く。華仔王子の口づけで姫は魔法から解放され、姫もアンディ王子をしっかりと認識して、メデタシ、メデタシ。姫と仲睦まじく寄り添った後、姫は退場。

一変して、ハードなテンポの「掛念」。会場は待ってましたの歓声。華仔はリボンの上着の片方の腕を残して、上着を脱ぎ捨てる。中は黒のランニング。迷彩服の衣装をまとったダンサーと共に、縦に横にと華仔を先頭にしながら、ステップの難しそうな、激しいダンスで会場は興奮のるつぼ。歌が終了した時、ステージの四隅から火柱がボーッと上がる。会場内がボッと熱くなり、観客の大きな歓声。

ここからはなんの仕掛けもなく、華仔と観客が向き合ったステージ展開となります。華仔が一言づつ自らの言葉でかたり、唱うというリラックスした、シンプルなステージです。ピンクのドレスのお姉さんがステージの隅に現れ、リボン上着の残り、腕の部分を脱ぎ去り、マントをはずし、インカムを取り、黒のランニングの上に黒のシャツを着せてくれます。ステージ四隅の角に椅子が現れ、華仔はそれに腰掛け、お姉さんはポットに入ったお茶かなにかを華仔に飲ませます。華仔はマイクを通してお姉さんに熱いキスを送ります、最初はなんの反応も示さなかったお姉さんが、日を追うごとにお返しの投げキスをするようになってました。ハンドマイクがスタッフから手渡され、スタンバイ完了。

正面左サイドからスタートになります。少しの語りがあり、歌う。
華仔は自分はハンサムが売りだから、ハンサムじゃないとダメみたいな事を言っていた(らしい)です。そして「只知道此刻愛女尓」を座ったままで唱います。この曲は、昔むかしの華仔の曲ですので、CDに収録されている昔の声とは断然重みが違っています、今の華仔のしっとりとした声が時の経過を感じさせてくれます。歌が終わると次の角にステージ下から椅子がせり上がってきます。華仔は次の椅子に移動。ブロックで言うと黄色サイドの左角。次の歌は「可不可以」。この歌の頃、映画に専念したほうが良いと言う周囲からの意見があり、華仔本人もそう思って歌を辞めようかと悩んだ時期だった…とのこと(らしい)。

次が青ブロックの右角。ここまで歩いてくるのに華仔は足をドタバタ〜としてウケてました。華仔がやる事はなんでも観客は楽しそうに真似します。なんでもこの青ブロックからは男性の「うぉ〜い」という声が多いと言って、華仔が真似すると観客も同じように「うぉ〜い」、今度は女性の声を真似ては「ギャ〜」と、なんだかすごい雄叫びのブロックと化してました。そして、歌は「流浪」。今までのおあそびから一転して、歌にはいりきる華仔の姿が、とても印象的。華仔の背中となる席にも、時々ちゃんとクルっと向きながら唱っています。最後は正面右角。20日はここの椅子が出てこなくて、華仔がステージの穴を覗き込んで、椅子を上にひっぱりあげるというハプニングまでありました。ここでの一言はなんだったのだろう…聞いたのに忘れてしまいました。歌は「浪子心聲」。観客席にマイクを向けて唱うように促します。最後にステージの中央に椅子を手で移動して、「情深的一句」。これは映画の主題曲で、前の96年の演唱會の時、その映画の1シーンのようにバイクに乗ったアンディが出て、クライマックスともいう盛り上がりを見せた曲でしたが、今回は華仔の歌だけがシンプルに会場に響き渡ります。なんの演出効果もありません、ただ、熱く、強く、切々とした声が会場に響き渡ります。大きな仕掛けがなくても、十二分に聞かせてくれました。徹底的にシンプルにすることで、歌そのものが引き立ち、ダイレクトに心に染みこみました。歌が終わると手を真直ぐに上げて華仔はステージ下へと退場。

 

正面右のベランダで、羽衣をまとった天女達の舞がスポットライトを浴び、一時の安らぎを与えてくれています。光る白い打ち掛けを羽織った、古装片姿の華仔がステージ中央からせり上がってきます。歓声がひときわ大きく上がります。演唱會前から噂となっていた、これが光る布地なのです。光を吸収した後、暗闇でピンクを紫に発色して、とても綺麗です。古装片に金髪っていうのもなんの違和感も感じません。天女達がステージにやってきて「真我的風采」を悠々と唱い上げてくれます。背筋をピンと伸ばした華仔の凛々しさが印象的で、優雅です。続いて蓮の花がステージの四隅にせり上がり、亀、カエル、金魚といった着ぐるみの登場です。なんとも色鮮やかな世界が展開され、観客は大喜びです。ステージが一つの大きな水槽であり、その中で色鮮やかな世界が繰り広げられているような感覚、竜宮城を想像してしまいます。そんな中、小坊主が現れ、華仔が「木魚與金魚」を唱います。こういう雰囲気の中で聞く「木魚與金魚」はコミカルで躍動的に聞こえます。華仔は亀がずっと這いずり回っていたので、労をねぎらったのでしょう、中央から退場する亀にそっと光る打ち掛けをかけてあげます。光る打ち掛けの下は、これまたシースルータイプの長襦袢のようなものを羽織っています。ステージの袖から、袖が長い羽衣姿の男女が登場して、「忘情水」となります。袖を優美にたなびかせて、華仔を中心に、優雅な天界の舞を披露、現実を離れた世界を思わせてくれます。そして長襦袢を脱ぎます。客席から悲鳴です。何ごとかと思うと、華仔の衣装がグレイの上下のチャイナになっているのですが、上着のバックがシースルーです。背中だけでなく、腕半分もです。真後ろから見ると、背中がそのまんまという事になります、悲鳴の訳もわかります。チャイナの色がグレイで小さい十文字の切れ目がたくさん入っています。シースルーのレースも同色なので、華仔の背中が、とても映えてキレイです。8月16日からはこのグレイのチャイナが真っ白となり。これまた清潔で爽やかです。曲は「中國人」。パンチのあるこの曲ならではの盛り上がりです。華仔はステージ正面右のベランダに移動して唱います。ステージ上では。剣の達人や拳法の達人がステージ狭しと技を披露してくれています。ベランダ側の熱狂もすごいものがありますが、一息つくと華仔はステージ中央へ戻り片足を上げ、ポーズを決め笑顔で、ステージ下へと消えていきます。

「死剰把口」のイントロが流れ、女性ライダーのバイクが2台ステージの裾から登場、次々と黄色のツナギを着たダンサーがステージ四隅かららせり上がってきて、かなりエロチックなダンスで客席の視線を釘付けにしています。あちらがからみこちらがという感じで、これからのステージに更なる期待を持たせてくれます。曲が「假裝」のサビとなり、ステージ中央から大きなBMWのバイク。そのバイクには女性ダンサーの足の間に華仔が横たわっているという、なんとも悩ましすぎる姿。女性ダンサーの衣装は短パンに長いヒモ状のものを身体に巻き付けたというだけの、挑発的、刺激的な衣装。華仔は白のランニングに白のズボン。最終日には華仔のズボンは黒の革製で、サイドに白のライン入り。この刺激的なシーンに客席の歓声は、絶頂に達しています。歓声というよりも悲鳴に近いです。華仔と女性は恋人同士なのでしょう。観客の声にも表情ひとつ変えずに2人世界に没頭しているようです。このあたりの徹底したイチャツキには、さすがに役者だと思ったりもしました。歌いながら華仔と恋人ダンサーはかなり過激に絡みます。二人の視線はお互いに注がれ、華仔の手が、女性のあちこちをまさぐり、二人の手付きがまたとても美しく絡み合います。恋人ダンサーは華仔を挑発、上に下にと身体が折れ曲がり、お互いの身体がかなり密着、唇まで触れてしまっているのではないかと見せるようなシーンもあります。ここまでくると観客の声は悲鳴、華仔と恋人の一挙手一投足に注がれて、大変な騒ぎです。しかし、ステージの二人は全く動じず、ひたすたマイ世界に埋没。ステージが下りてきて、バイクを降りた二人はまだもつれ合っていますが、曲が終わりを告げると、恋人達にも別れが待ち構えています。華仔の恋人は、なんと女性に奪われてしまうという…、その女性と仲間達とでバイクと共に笑いを残してステージから消えてしまいます。一人取り残された可哀相な華仔…。しかし、めげてはいません。次なる「我恨我痴心」は華仔の次の恋人探しなのかもしれません。黄色いツナギのダンサーが登場し、今度は客席に向かって、挑発しまくります。激しいダンスを披露しながらも、4方向全てで、片手を頭にかざし、もう一方の手を股間に置き、腰を前後左右にというセクシーショットのサービスぶり。客席の悲鳴はさらなるもとなり、嵐状態。ハードなダンスで、フェロモンまき散らしのアンディ。「我恨我痴心」をこんな形で聞くなんて、想像もできない事でした。華仔の最後のジャンプと共に大歓声。

そして、次なる曲は「他的女人」。ゆっくりとステージから客席に降りて、手摺に足を掛けながら、客席に唱いかけます。このとき、華仔は客席に近づきランダムに観客を抱き寄せたり握手したりしてました。なんとも微笑ましいというか、お騒がせというか、おちおち落ち着けない場を、華仔が楽しそうに演出って感じでしょうか。歌が終わると同時にステージのあちこちから紙吹雪きがポンポンポンポンポーンとすごい量で舞い上がります。そろそろ演唱會も終わりを告げています。紙吹雪きはステージ下からの風に舞い上がり、その中央に両手を広げてスター劉徳華が満面の笑顔。これがスターと思わせるに十分な演出。そして、ラストソングが「再會了」。いつかまた会える…そんな期待を胸にこの曲は観客の全ての胸に響きます。客席から歌声がこだまし、皆が華仔との次の再会を心に描いているのでしょう。ラストにはぴったりの選曲。そして、ステージ中央に立った華仔は、右手を高々と上げ、人さし指を1本立て、ナンバーワン、僕はナンバーワン!と、力強く示し、満面の笑顔を客席に残し、ステージから降りていきます。すばらしいエンディングです。

 

 

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